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たくさんの方に知ってほしい!介助犬の実情について聞いた10のこと(前編)

素材提供:(社福)日本介助犬協会

こんにちは、矢野建設です。

みなさんは「介助犬」という名前を聞いたことがありますか?「盲導犬」「聴導犬」と並ぶ身体障がい者補助犬の一種で、手や足に障がいのある方の日常生活や社会参加をするためのサポートをしてくれる犬のことです。

介助犬の名前をあまり聞かないことの理由の一つに、その頭数や認知度の低さが関係しています。矢野建設も協賛した「第14回介助犬フェスタ2024(主催:社会福祉法人日本介助犬協会)」で聞いた話に興味を持ち、介助犬総合訓練センター~シンシアの丘~で、詳しくお話を聞かせていただきました。

一人でも多くの方に知ってほしい内容でしたので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

お話を聞かせていただいたゼネラルマネージャー水上さん(右)と、広報チームの石田さん(左)
お二人の話しぶりから、とても犬たちを大事に育てているのが伝わりました

写真提供:(社福)日本介助犬協会

1.介助犬について

介助犬について、どういう犬なのか教えてください。

日常生活に困難を抱えている肢体不自由者を対象に、落としたものを拾ったり、ドアをあけたり。その方の困りごとを解消して、自立と社会参加をしたい方を目的に、ペアとなって活躍してくれる犬たちのことを介助犬といいます。

※肢体不自由・・・病気やケガなどにより、上肢・下肢・体幹の機能の一部、または全部に障害があるために、「立つ」「座る」「歩く」「食事」「着替え」「物の持ち運び」「字を書く」など、日常生活の中での動作が困難になった状態をいいます 
引用「東京都福祉局」

現在日本には何頭の介助犬がいるんでしょうか?

59頭だけです。

(2024年4月現在)

59!!それだけ少ない頭数だと一般の方はもちろん、介助犬を必要とされる方の知る機会もとても少ないのではないですか?

そうですね。介助犬普及率の低さの一因として、その特性が関係しています。

介助犬は「身体障がい者補助犬」の中の一種で、盲導犬は目の不自由な方、聴導犬は耳の不自由な方、介助犬は手足の不自由な方のサポートをしてくれます。盲導犬、聴導犬と大きく違うところが、オーダーメイド性の高さです。

介助犬の補助対象となる「肢体不自由者」の方々は障がいの程度の幅がとても広くて。下半身が麻痺している方、首の骨を折って胸から下が全部麻痺している方、進行していく障がいの方など、中には数年単位で身体の状況が変わる方もいらっしゃいます。

生活面では自走(自分の手で漕ぐ)の車いすを使用されている方から、100㎏級の大きな電動車いすに乗って生活している方、杖で生活している方、おうちの中は歩行で外出時は車いす、など。本当にいろいろなタイプの方がいらっしゃいます。

障がいのある方それぞれのご希望に合わせて訓練を進めていくため時間がかかります。障がいのある方の自立や社会参加のサポートをするのが補助犬の役割ですが、どの介助作業を訓練するかよりも介助犬に適しているかどうかを見極めることが大事で。

介助作業がいくらできても電車をはじめ乗り物に乗ることが苦手だったり人ごみに行くことが苦手だったりすると、犬が不幸になってしまいます。そういう犬を無理に介助犬にするわけにはいかないので、まず適性があるかどうかを見極めたうえでいろいろな作業を教えていきます。

兄弟犬が6頭生まれたとしても、1頭2頭が介助犬になったら万々歳。そのくらい適性のある犬が少ないところが、育成の難しさや時間がかかるところ、ひいては普及率の低さにも繋がっています。

愛くるしい表情の介助犬。こんな表情の犬たちと暮らしていたら心まで癒されそうですね。
写真提供:(社福)日本介助犬協会

2.介助犬としての適性

いろいろな訓練をしたうえで、その子が介助犬になることが本当に幸せかどうかを見極めて決定されているというお話を聞いて、機械的ではなく犬のこともすごく考えていらっしゃるのだな、と感じました。

ありがとうございます。向かない犬を介助犬にするほどその犬にとっても、その犬を渡された障がい者にとっても不幸なことはないので、そこはきちんと見極めています。

ただ、「介助犬になろうがなるまいが1頭1頭必ず幸せにする」という強いポリシーを持っているので、命に対して誠実に向き合っていかなければならないと思いながらやっています。

すごい。本当に骨が折れるというか…。

そう、本当に効率悪いんですよ。日本各地で広報活動を行ってくれているチームは、「なぜそんなに介助犬が増えないのですか?」とか、「たったそれだけですか?!」とか、たくさん質問を受けるので、苦しいだろうなと思うのですけれど。

障がい者のための福祉と思い日々育成をしていますが、それが犬の犠牲の上にあってはならないので、犬の福祉も守ったうえで障がい者の役にも立つことを大前提にしなければいけない。「電車苦手だけど頑張ってね、ごめんね」とはしたくないです。電車に乗ってもぐーぐー寝れちゃうくらい平気な子に介助犬になってほしい。

「この子は障がいがある方が扱うことはできないけれど、介助作業をするのはすごく好きだし人も好きだからPR犬になれるね」と、介助犬にはならずPR犬として活躍している犬は職員がパートナーになる分には何も問題がありません。

複数頭いますので、「このイベントにはこの子が向いている」などPR犬の中でも特性に合わせて活躍してもらっています。

介助犬には向かなくても楽しんでやれる役割は他にもある。いろいろな道をみつけてやりたいと思っています。

しっかり性格を見極めて、適材適所ですね。

そうですね。私たちが介助犬として育てているのはレトリバー種(ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーなど)という、もともと鳥猟犬として作られた犬種なので、人と作業するのが好きだし、物を持ってくるのが得意な犬種なんです。

トレーニングをみていただいたとおり、とにかく人と一緒に作業をすることが楽しい!「携帯電話を持ってきて」という作業も宝探しゲームみたいで楽しい!とやってくれるので、どの子も作業自体はできるようになります。

でも、高所恐怖症の人が「何回も登ってみたら平気になるよ」と言われても「無理なものは無理!」となるように、犬によっても苦手なものがあります。

それは電車だったり人ごみだったり。

慣れたら平気になりましたという犬もいるので、そこはしっかり見極めをするのですが「どうやってもこの子にはストレスになるよね」と判断した場合には介助犬からは外さなければいけない。

犬に介助作業を教えることよりも、介助犬として負担なくやっていけるかどうか。その見極めの方が難しいなと感じています。

なるほど。認知度の低さから、もっともっと介助犬について知ってほしいと同時に、すべての犬たちが「この子は介助犬になることで幸せになれるだろうか」というところをすごくすごく厳選して見極めていますよ、という事実も一緒に認知してもらえるようになると良いですね。

気持ちよさそうに寝ている姿。こんなふうにリラックスして介助ができると最高ですね。

3.介助犬ってかわいそう?

働く犬ってかわいそうっていうイメージを持っている方も多いですね。私が子供のころは「盲導犬はかわいそうな犬だ」という認識が圧倒的で。

映画にもなっていました。たばこの火をジュって押し付けられても我慢するくらい仕事に忠実になるよう厳しく訓練をして、人間に仕える健気な犬。かくいう私自身も寿命が短いと思っていました。

今まで何度も「この子たちはしっぽを踏まれても『キャン!』って鳴いたらいけないんでしょう?」と質問されました。

いやいや、痛いって言いますよ!人を噛んでしまったら問題になりますけど、痛いと表現することに何か問題があるでしょうか?それを我慢しなさいなんて絶対に言いません。

人間でも「突然つねられても痛い!って言ったらだめだよ」とか、そんなのいじわるじゃないですか。同じだと思うのですが、それでもやっぱり「補助犬たちは痛いことも我慢しているんだ」と思われている方が一定数います。

だから、そういう意味では私たちは「犬に負担をかけるようなことはしてないです。犬が楽しんで介助犬になれるかどうかをちゃんと見極めています」という認知を広げるために啓発していく必要がありますね。

障がい当事者からも「そんなかわいそうな犬、私は連れたくないです」とか、「もし介助犬を持ったとしても、周囲の方がかわいそうな犬だと思っていたとしたら、私自身がそれに耐えられません。だから私はまだ介助犬を持ちたくありません」とおっしゃる方もいます。

正しく認知を広めるために広報チームが全国飛び回ってくれていますが、草の根運動です。

今回の取材も、もしかしたら普段私たちが関わることのない業者の方がご覧になるかもしれないし、一般の方でもお家を建てたり家を探すとなれば建設会社さんのホームページを探すかもしれない。

普段接することのない方々の中に介助犬ユーザーになる方がいらっしゃるかもしれない。なので、私たちが認知できないような方のところへ一つでも多くの媒体で広めていただけるとありがたいです。

そうですね。弊社にも住宅のリフォーム部門があるので、そういうところからも目に留まると良いなと思います。手すりをつけたり、介護用のリフォームをされたりする方もいらっしゃいますので。

そうなんですか。介護に必要なリフォームをされる方も多いですよね。

はい。弊社の事業を通じて架け橋になれると嬉しいです。

介助犬はスーパードッグと思われているところがあって。それって犬にすごく負荷をかけるんです。犬は犬らしくいてほしいなと思うので「この子はこういう特性があります」ということをきちんとお伝えしています。

人間もそうですけど、100点満点の人なんていないじゃないですか。良いところもあれば苦手なところもある。「あなたが苦手な□□は僕がお手伝いするけど、♢♢はちょっと許してね」とか、犬には犬側の申し分があります。

そこをユーザーさんにちゃんと理解していただいて、知ったうえでペアとして成熟していっていただきたいと思っています。

苦手なことを踏まえたうえでお互いに絆ができると本当に良いパートナーになりそうですね。

矢野建設が携わらせていただいた、犬との生活に慣れるための長期訓練ができる部屋
このような宿泊訓練ができるのは、日本でここだけです
右麻痺、左麻痺に対応したレイアウト違いの部屋もあり、利用者に寄り添った気遣いがされています

写真提供:(社福)日本介助犬協会

4.介助犬を迎えるメリット・デメリット

介助犬を希望される方がいらっしゃったときに、私たちから必ずお話することがあります。

「この子は介助犬として適性がありますが、介助犬としてやれることはこういうことで、やれないことはこういうことです。今までは何もしなくてよかったけれど、犬がきたとたんお世話も発生します。もしかしたら朝は15分や30分早く起きなきゃいけなくなるかもしれません。お散歩も必要です」など。

「生活が便利になる、楽になる」という気持ちだけで介助犬を迎えようと考えている方がいたとしたら「それじゃあロボットの方が良いんじゃないですか?」と考えます。犬だからこそできる、人では補えないメンタル的な、私たちも考えもしなかったような効果がどのペアにもあります。

それは介助犬と暮らしてみないとわからないし、最初から手放しで「すごく良いですよ!」と言うつもりもありません。

当たり前ですが最初は苦労もあります。動物を飼ったことがない方ですとトイレのタイミングとかに慣れるまで大変だったり。なので「思ってたのと違った」と感じられる方もいらっしゃいます。

でも、半年も経つと良さがわかってくることがほとんどです。でもそれは1週間や1か月でわかるものではなくて、苦労して一緒に試験を頑張って認定を受けたり。一緒に頑張って補いあって、そのプロセスがあるから絆もより深まる。裏を返せばそのプロセスを経てようやく、なんですよ。

ロボットではなく生きている犬だから、お互いに感情があるからこそ絆が生まれるのですね。

本当にそうです。犬を飼ったことがある人だったらわかるかもしれないですけれど、一度も飼ったことがない方だと「落としたものを拾ってくれるの?人を呼んで頼むのも気兼ねするから犬の方が良いわ」と思われる方もわずかですがいらっしゃいます。

そういう方には「よーく考えてくださいね。そこは便利になるかもしれませんが、お世話、発生しますからね」と念を押しています。

私たちも良いことだけをお伝えして押し売るつもりはないですし、間違いなく良いということは確信しています。介助犬を持つと2頭目3頭目と希望される方が多数いらっしゃいます。

やめられないんだと思います、介助犬のいる生活を。

一度ユーザーになった方は啓発活動を一緒にしてくださる方も多くいらっしゃいます。「こんなに素晴らしい存在はみんなに知らせたいです。何故3年も悩んでいたのか。今だからこの子に出会えたのでそれはそれで良かったけれど、こんなに良いものだったらもっと早く決断すれば良かった」とおっしゃってくだった方もいました。

それは実は私たちにも本当の意味ではわからない感情なんです。なぜなら介助犬と一緒に暮らしたことがないので。生きることが苦しいとか、人に頼むことが苦痛だとか、気兼ねしてしまうとか、そんな困難に陥って、それを助けてもらった経験がない。

彼らじゃないとわからない苦しさと、介助犬の良さは私たちが語るより当然響きます。当事者の言葉は。

だからこそ、「持った方が良いよ」と強くおっしゃる方もいる一方で「覚悟もいるよ。命を持つ覚悟はあるの?」と伝える方もいます。「持った方が良い」という思いと同時に「犬を不幸にするくらいなら持たないでね」という、大事に思うからこそ厳しい意見をおっしゃっています。

パートナーを大事に思うからこその心配ですね。

一緒に頑張ることでゆるぎない絆が生まれる

写真提供:(社福)日本介助犬協会

5.勇気を出して最初の一歩を

介助犬を1頭持ったら、その方の繋がりで増えていくこともあります。親御さんがすごく反対されていてなかなか介助犬が持てなかったけど、お友達が介助犬と暮らしている様子を見てご両親が納得して自分も持てるようになったというパターン。

障がい者になってから何年も介助犬のことを知らずにいた方が、たまたま病院で見かけた際に「あれは介助犬だよ」と教えてもらって、自分も一緒に暮らしてみたい、と興味を持った方もいらっしゃいます。

その方がまた知り合いの方をご紹介くださったり。身近に介助犬の存在があるとみなさん興味を持たれます。自分も持ってみようかなと考える方も多いです。

しかし、介助犬の存在を知っているだけの方はまた感じ方が違い、遠い存在だと感じているようです。

たとえば、「介助犬の存在は知っていますが、私は持てないですよね。だって1万5千人も待っているんですよね。」と言われたことがありました。

たしかに啓発活動の際に「介助犬はこれだけ少ないんです。なので認知度を高める協力をお願いします。支援をお願いします。」とお話するときに、日本には1万5千人ほど介助犬が必要な方がいらっしゃるという説明をします。でもそれは1万5千人の方が全て手を挙げているわけではなく、潜在的にいるというお話です。

ほかにも、育成費用が1頭につき250万円から300万円かかるという話を耳にして「そんな貴重な犬を私なんかが手にするなんておこがましいです」と思われたり、テレビで特集されているのを見かけた方は「自分よりすごく重度な方が介助犬を持つものなんだ。私は頑張ればなんとか生活できる。このような状況で介助犬は持てないだろう」と判断される方もいらっしゃいます。

その逆で「犬のお世話もあるし、ある程度動ける人じゃないと無理だよね」と諦めてしまう方もいらっしゃいます。

みなさんに知っていただきたいのは「全ての方に可能性があります!まずは問い合わせてみてください」ということ。すごく勇気が必要なことだと思います。でも、まずは一歩踏み出してみてほしい。

せっかく勇気をもって問い合わせをしてくださったのに、けんもほろろに「あなたみたいな人には介助犬は出せないです」と冷たく言われたらシャッターをガラガラッと下ろされてしまった気持ちになりますよね。

ですので、私たちの協会では電話対応の大事さを伝えています。「協会の顔だからね。最初の電話は大事だよ。すごく勇気を振り絞ってかけてきてくれる方もいらっしゃるからね」としっかり教育しています。

ありがたいことに「電話で対応してくれた職員さんが、すごく感じの良い方だったのでここに決めました」と言ってくださる方や、「イベントで対応してくださった職員さんがすごく親切にしてくださいました」言ってくださる方もいらっしゃいました。

電話を取ってくれている職員も、広報活動をしてくれている職員も、その職員がきっかけでその方の人生を左右することも多いと思います。

介助犬を持つか持たないかで人生はすごく変わると私たちは思っていますので。

石田さん(広報職員)、さっきから目が合うたびに、にこってしてくれるんですよ。

そう、うちにはこういう広報に向いてる職員しかいないです!

はずかしい~!!

石田さんみたいな方ばかりだと、安心して相談できるだろうなと思いました。

みなさんが一丸となって頑張っていらっしゃるんですね。

勇気を出して、最高のパートナーとの出会いを

写真提供:(社福)日本介助犬協会

いかがでしたか?

ここまでは介助犬育成の実情や認知の少なさ、介助犬と暮らすメリットなどのお話をさせていただきました。

後半では介助犬と過ごすことで得られる心の癒しや引退した介助犬の暮らしなどのご紹介をいたします。

ぜひ後編もご覧ください。
~後編はこちら~