たくさんの方に知ってほしい!介助犬の実情について聞いた10のこと(後編) 素材提供:(社福)日本介助犬協会 こんにちは、矢野建設です。このコラムは介助犬の実情やパートナーとの暮らしなどについてご紹介する記事の後編です。前編では介助犬の育成の実情や認知の少なさ、一緒に暮らすメリットなどをお話させていただきました。まだ前編をご覧になっていない方はこちらのリンクからどうぞ。 お話を聞かせていただいたゼネラルマネージャー水上さん(右)と、広報チームの石田さん(左)お二人の話しぶりから、とても犬たちを大事に育てているのが伝わりました写真提供:(社福)日本介助犬協会 6.介助犬と心の癒し 介助犬と一緒に暮らすことで心も癒されていくようですね。 人間同士だと例えば家族が快く動いてくれたとしても「本当はどう思ってるの?」「遊びに行きたいけど自分のことが心配だから我慢してお家にいてくれてるんじゃない?」など、ついつい考えてしまいがちですけど、犬はポーカーフェイスをしないので、楽しいときは「楽しい~!」だし、ちょっと面倒だなと思ってるときは「面倒くさいな~」と全部顔に出してくれます。それを見て「自分も自分らしくいればいいんだ、と思える」とユーザーさんがおっしゃっていました。肩ひじ張って平気な振りをしていたけど、気を遣いすぎるのはやめようと思えるようになったそうです。やっぱり犬なんですよ。人間ではそれができないから、「犬って素晴らしいな」「犬ってすごいな」と思います。 シンシアの丘の入口に飾られている、介助犬ユーザーさんの作品 7.私たちができること 日本人って知らない人を相手に「何かお手伝いしましょうか?」となかなか声がかけられないじゃないですか。それは冷たいというわけではなく、「私みたいな素人が声をかけてしまって良いのだろうか。車いすも押したことがないし、かえって失礼なのではないだろうか」と変に気をまわしてしまって声がかけられない人が多いですよね。でも一言「なにかお手伝いしましょうか?どのようにお手伝いしたら良いですか?」と聞いてみると「ありがとうございます、じゃあ〇〇してください」と大概の方が言ってくださいます。もし必要がなければ「いまは大丈夫です」と返事が返ってくると思います。困っていそうな方を見かけたら勝手に押したり手をひいたりせず、まずは一言声をかけてあげてください。困っているときに声をかけてくださったら嬉しいです、と多くの方がおっしゃっています。その方がもし補助犬を連れていたら「かわいいワンちゃんですね」と声をかけるところから始めても良いと思います。それができるようになるとすごく良いなと思います。日本の課題ですね。海外で暮らす障がい者の方は困ることが少ないとおっしゃいます。バリアフリーじゃなくても誰かが助けてくれたりするそうです。 健常者に対してもそうですよね。道に迷っていそうだったら「どうしたの?」とか そうそう。その辺が日本って、いい人なんだけど複雑に考えすぎちゃって声がかけられない方が多いですね。あとはシャイな人が多いのもあるかな。声をかけることはもちろん積極的におこなってほしいですが、それ以外にもできることはたくさんあります。点字ブロックの上に物を置かない、スロープの上に物を置かない。誰かが障がい者用の駐車スペースに車を停めようとしたら「ここに停めたら困る人がいると思うよ」と声掛けをする。これらは介助犬に限ったことではないですが、みなさん犬の話から入るといろいろ興味を持って聞いてくださるので、啓発活動の際に一緒にお話をしています。もしかしたら明日事故にあって障がいを負うかもしれないし、病気で目が見えなくなるかもしれない。他人事じゃないなと思うんです。 それがもっと自然に世の中に広がると良いですね。 できることから少しずつ・・・写真提供:(社福)日本介助犬協会 8.引退した介助犬のその後 介助犬の引退や、その後の生活というのもなかなか一般の方は知らないことが多いと思いますが、引退後はどうしていますか? そうですね、まずは認定から引退までの流れについてご説明します。実は介助犬として認定を受けてユーザーさんに引き渡したあとも、私たちは毎年フォローアップを続けています。生き物ですし、犬は学習もし続けます。生活していくうちに新たなニーズが生まれたり、何か怖い経験をして犬の行動に変化が出たりすることもあるので、介助犬とユーザーさんがずっとハッピーに暮らし続けるためにフォローアップをしているんです。そうして11歳を迎える手前で引退を迎えます。私たちは「無償貸与」という形をとっているので、引退を迎えると形式上は一旦返還をしてもらいます。そこからは3パターンにわかれます。1つめはユーザーさんのご家族がそのまま引き取るという形。健常者のご家族がいて、経済的にも環境的にも問題ないと判断された場合には引退後も一緒に暮らす方もいらっしゃいます。老犬になったときに獣医療費かかったとしてもきちんと費用の負担ができるか、介護が必要になったときにはそれができる環境にあるか、などをきちんと確認してお渡ししています。2つめはパピーホームで引き取る方法。介助犬は生まれてから1歳までをパピーホームと呼ばれるボランティアさんのお家で過ごして育てていただきます。そのパピーホームで引き取っていただくパターンです。3つめは引退犬を希望されている方が引き取る方法。ユーザーさんが独居などで手放すしかなく、パピーホームでの引き取りも難しいとなった場合には引退犬の引き取り待機をしてくださっている方のところで余生を過ごします。 元気なうちに引退してもらうのも、犬のことを考えていらっしゃるがゆえなのだなと感じました。ちゃんと余生を楽しむ余白があるというか。 そうですね、先日も引退した介助犬と元ユーザーさんが何組か再開していましたよ。介助犬フェスタに引退した子を連れてきてくださっていて。微笑ましい光景が広がっていました。 わぁ!素敵ですね。 介助犬を引退した後も、楽しい余生を送ってほしいですね 9.犬を介して広がるコミュニティ 私たち、介助犬のユーザーさんも引退犬の引き取りも、様々な条件を設けておりまして。やっぱり生き物なので、ちゃんと愛情をもって命ある生き物として接して、可愛がってくださる方かどうか。うちほど審査に時間をかけている事業者はいないんじゃないかと思うほど、まぁうるさいです(笑)アンケート用紙も何十項目にもわたって確認したり、電話インタビューでも時間をかけたり、お家の環境、状況、ご家族の全員が賛同しているか、協会の理念にも賛同してくださっているか。たくさんお話を聞かせていただいて、犬を送り出しております。ここで生まれたとしても介助犬にならない犬が大多数ですので、PR犬でもなく一般家庭にいく犬もなかにはいます。そうしたキャリアチェンジ犬のファミリー交流会をすると何十頭と集まってくださるんですよ。みんなうらやましいと思うくらい可愛がられていますね。どの方も「こんなに良い子を譲っていただいてありがとうございます」と言ってくださいます。私たちが信頼できる方にしか犬を渡さないので、パピーホームさんも「協会が変なお家に犬を出さないことがわかっているから、安心してパピーホームを続けられます」とおっしゃってくださいます。介助犬になってもならなくても双方が希望すれば再開もできますので、パピーホームのご家族と現在犬と一緒に暮らしているご家族が一緒に旅行に行った、なんて話も聞きますね。 すごい繋がり!自分の元を離れたあとも幸せにしている姿が見られるのは嬉しいですね。 そうですね、私たちはボランティアさんを裏切ることはできないし、犬を裏切ることはできないし…それは支援者の方を裏切ることにもなるので。とにかく誠実に進めることを考えています。それがあるから信頼していただけていると思いますし、支援も続けていただけているのだと思います。 当たり前のように言われていますけど、手を抜くことってすごく簡単じゃないですか。あれは大変だからやめよう、これは面倒だからやめよう。そうして簡単にしていくことで楽にはなると思います。でも、犬も人もみんなのことを考えて誠実に進めていらっしゃるからこそ、周囲の方も信頼してくださっているのだと感じました。 10.支援者やボランティアとの、いい関係 介助犬になる子もならない子も、手間暇かけて育てさせていただけているのは支援者の方たちに恵まれているからだと思います。昔は補助犬にならない犬のことをリジェクト犬…排除する犬、と呼ばれていて。補助犬になることが目的であっても、犬が「ぼく、介助犬になりたいです」と言ったわけではなくて、こちらが勝手に選んでいるのに犬にも失礼ですよね。そこからキャリアチェンジ犬と呼ばれるようになりました。最近はそれも違うのではないかという意見があって。生まれてきて、訓練をした結果、この子には何が向いているのかな?と判断しているのでキャリアチェンジですらないのでは、という議論もあります。私たちはとりあえず犬を育てて待っている順に出したり、介助犬にならないからといってすぐ外に出したりしたくありません。その子たちに本当に適した場所で幸せに暮らしてほしい、ということを考えてやってきましたし、それを許していただける環境にもあったので、本当にありがたいなと日々感謝しています。 素晴らしい相互関係ですね。お互いにそういう志の方たちだから同じところに集まってくるのでしょうね。 そうかもしれないですね。だから、ボランティアさんも良い人しかいないです。矢野建設さんもそうですよ。困ったときに連絡するとすぐお答えしていただけるし、何かあったらすぐに飛んできてくださったり。本当に良くしてくださるので。ちょうど昨日もきていただいたところです。なんでしたっけ、一生… 「あなたと一生いい関係」 そう、それです!うちの理事長がすぐそれを言ってます。 覚えてくださっていて嬉しいです。是非これからも一生、いい関係でいてください。本日は貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。 あなたと一生、いい関係写真提供:(社福)日本介助犬協会 介助犬総合訓練センター~シンシアの丘~ 〒480-1311 愛知県長久手市福井1590-51https://s-dog.jp/最新情報はホームページやSNSにて随時更新中!